ファインダーのむこうから

写真館にはいろいろな記念に、さまざまなお客様が訪れてくださいます。
そして、そこには必ずといっていいほど人生のドラマが存在していることを実感します。ここでは、そんなファインダーのむこうから伝わってきた、いくつかの物語をご紹介していきたいと思います。

Heartwarming story 2

人生を変えた1枚のスナップ写真

私はニ代目として写真館を父親から継ぎ、この仕事に携わって40年。

大学を卒業して長男の私は、自分の家業である写真館に就職。店鋪もまだ一店鋪で、スクールアルバムが全盛の時代でした。写真もなにもわからない私は、とりあえずスクール写真を担当することになり、不馴れなカメラを持って毎日幼稚園や、小学校、高校などのアルバム写真を撮影に行く毎日。

当時のカメラは今ほどコンパクトでもなければ、軽くもありません。重労働でした。また、学校に行くと生徒にからかわれたり、失敗の連続。自分の思うようになりません。

当時、時代は高度経済成長の真只中。大学時代の同級生たちは商社へ、海外へと花形職業の中で世界を相手に仕事、片や自分は学校でカメラと子供と土にまみれて悪戦苦闘の毎日。自分だけが時代に取り残され、仲間に取り残されているような惨めな気持ちでいっぱいでした。『いつかこんな仕事やめてやる』『明日こそこんな仕事やめてやる』そんなことばかり考えていました。

ある日、店番をしていると一人のお母さんらしき女性が来られ、1枚のスナップ写真を手に『この写真に写っているこの娘を大きく伸ばしてほしい』と言われました。その写真には高校生の女の子が楽しそうに友だちと笑って写っていました。なにに使われるのか聞くと、『実は娘が病気で亡くなりました。その遺影の写真がとても悲しそうな顔で、毎日見ていると悲しくて、17才で逝ってしまったことが不憫でなりません。でも、ここに写っているこの子は本当に楽しそうで幸せそう。17年の短かい命だったけど、きっと精一杯生きて、楽しい事もたくさんあってよかったね、と思えるんです。だからこの写真を遺影のかわりに飾っておきたいんです。』

その時私は何気なく、『この写真のネガはお持ちですか?ネガがある方がきれいに写真が伸せますよ。』とお母さんに伝えると、『この写真は、おにいちゃん、あなたが撮ってくれた写真よ。ネガはあなたが持っているはずよ。』と言われて、愕然としました。こんなに大切に思ってもらっている写真を、今まで自分はなんていい加減な気持ちで撮っていたんだろう、とショックでした。私は、そのお客さんの一言で、これからは『人を幸せにする写真を一生懸命撮ろう』と心に決め、必死で写真を勉強しました。

『写真は心のメッセージ、1枚の写真が幸せを運びます』そのコンセプトが、今のストーリーテラーの写真の原点になっています。そして今年2002年、ストーリーテラーは創業70年を迎えます。これからもあの時のお客様の言葉を忘れることなく、写真を撮り続けていきたいと思います。

Storyteller ストーリーテラー株式会社
代表取締役  藤田 幸一
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Heartwarming story 1

おばあちゃんのウェディングドレス

4〜5年前の出来事です。ある日、婚礼写真の撮影の問い合わせが入りました。それは、ウェディングドレス希望で、貸し衣裳から撮影まで、予算は3万円しかありませんとの事でした。

当時その予算では婚礼写真は撮影できないので、やむなくお断りの電話を入れることにしたのですが、その時のお客様の電話では、「何とかしてほしい」との強い気持ちが伝わってきて、簡単には断わりにくい感じでした。そこで、丁重にお断りをいれるために、もう一度社長の私から電話をさせていただくと、実は、この婚礼写真は、お孫さんたちからおばあちゃんへのプレゼントで、それでお孫さんたちが出しあえるお金が3万円で精一杯だったのです。

おばあちゃんが結婚した時代は、戦争などで世の中が混乱していて、せっかく撮影した結婚式の写真も時代の混乱とともにどこかに消えてしまい、いつもおばあちゃんが淋しそうに「私の結婚式の写真ってほんまにきれいだったのよ。みんなに見てもらえないのが悲しい・・・」という話を、いつもお孫さんたちにお話しされていたそうです。

それを常々聞かされていたお孫さんたちが、おばあちゃんのために思いついた誕生日のプレゼントが、『ウェディングドレスの結婚写真』だったのです。

私はそのいきさつを聞き、家族みんながおばあちゃんを思う気持ちに心を動かされ、撮影を受けることにしました。撮影当日、70才を越えたおばあちゃんが、お孫さんたちに囲まれてウェデイングドレスをまとった姿は、私がカメラマンとして数えきれないほど写した花嫁さんの中でも、とびきりかわいい、ほんとうに美しい花嫁さんでした。80才近いモーニング姿のおじいちゃんと二人で、照れくさそうにカメラの前に立たれた姿を見て、最高に素敵なカップルだと思いました。

それをお孫さんたち、家族みんなが取り囲んでシャッターを切り終えた時は、みんなから一斉に拍手がわき上がりスタッフ全員も思わず拍手に参加していました。

カメラマンとして、今でもたくさんの人々を撮りつづけていますが、そのおばあちゃんの美しく輝いている花嫁姿は心に残る写真のひとつです。

Storyteller ストーリーテラー株式会社
代表取締役  藤田 幸一
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